2013-07-15

急激なダイエットの危険性と身体のメンテナンス

少し古い話になりますが、ある知人のお話です。

その知人は、いわゆる中年太りというのでしょうか、40代にかなり太った時期がありました。

その後、その方は頑張って体重を2割以上減らしたのですが、その過程で、毎月5キログラムという過激な減量を2ヶ月も行ってしまいました。つまり2か月で10キロ落としたわけです。

ちょうどスポーツジムに入ったばかりで好奇心もあり、週に3日以上もジムに通っていたようです。運動を始めたのだから体重が減る事は良い事だと思い込んでいたそうです。体重が面白いように減るので、食事も制限(ダイエット)してさらに体重を減らしました。余計な脂肪が沢山ついているので、簡単に体重が減るのだと思い、単純に喜んでいたとのことでした。

しかし短期間での急激な減量のため、体重の低下とともに、いくら運動していても筋肉量は増えるどころか維持することさえ出来ず、実は低下し続けていたのです。

3ヶ月目に入った頃には、10キロ以上の減量でかなりスリムになり運動するのも楽になるはずでしたが、その一方で、腰痛や膝痛の症状が出始めました。それでも、本人は深刻な状況であることを知らなかったため、ジムのランニングマシンやトレーニングマシンを使わなくてもできる運動、膝が痛まないレベルでの歩くトレーニング等に切り替え、運動を続けました。本当はしばらくあらゆるトレーニング運動を休むべきだったのでしょうが、筋肉を鍛える事で痛みも自然にとれるハズと考えた様です。ところが、この痛みは何時になっても改善しませんでした。

こんなとき誰に聞けば良いかも分かりませんよね。ジムのトレーナーにも知識のある方は居られますが、当時その方の状況について親身にアドバイスをされた方はいなかったようです。

その後、いつまでたっても改善しない身体の痛みに不安を覚え、ご自分でいろいろ調べて自分が危険なレベルの減量をしていたことに気づかれました。運動を暫く休み、減量も一時的にストップしました。それでも膝や腰の痛みがすぐに改善されたわけではなく、その後かなり長い期間に亘り、その痛み、辛さを抱えた生活をせざるを得なくなったのです。

その方のお話を聞いたのは、それから何年も経った後で、体調が悪いと少し痛みが出るというレベルまで改善されてからでした。

これは減量が原因で腰痛と膝痛を引き起こしてしまった典型例でしょう。太る事も危険ですが、減量もやり方によってはとても危険な一例です。知識が不足していたために起きた事故と言ってもよいのかもしれませんが、実際、このような危険性を十分認識していない方も意外と多いのかも、と思います。

注意しなければならないのは、取得カロリーが少ない中で激しい運動をすると、体重は確かに減るけれども、落とすべき脂肪だけでなく、落としてはいけない筋肉まで減ってしまうということです。このことは数々の実験が証明しています。特に一度減ってしまうと、鍛えにくく元に戻すのに時間のかかる体幹のインナーマッスルの減少は危険ですね。
(ダイエットによる減量の場合でも筋肉の減少は同じです。ここでは、たとえ運動して鍛えていても、短期間に大きく減量すると筋力の減少を防止できない、ということを強調しています。)

今では体幹を鍛えるトレーニングが注目されるようになってジム等でのスタジオプログラムの中に色々な形で取り入れられるようになってきていますが、インナーマッスルを鍛えるマシンの方はまだまだは主流とはいえないようです。地味な動きを粘り強く継続してもなかなかその成果が見えにくく達成感の得にくい、インナーマッスルを鍛えるマシンというのは、ジムとの折り合いがあまり良くないということなのかもしれませんが・・・。

専門家の間では短期のダイエットが危険な事は良く知られている事です。短期に痩せる方法が色々と宣伝されていますが、多くがその限界値であると言われる月に3キロレベルの減量を目標としているものです。でも私は、月3キロの減量も「やり方によっては危険な領域に入る」可能性があるのではないかと思っています。

月に3キロの減量ということは、1日に100グラム相当になります。100グラムの脂肪を消費するエネルギーは700キロカロリーです。一日の標準摂取カロリー(年齢や体重等によって変わりますが、2000キロカロリー強)から700キロカロリー少なくするということはほぼ1日に一回食事を抜くのと同じになり、これを毎日続けるのですから、身体にとってはとても大きなインパクトになりますので、細心の注意が必要です。

体幹の筋肉は我々の姿勢や身体のバランスを維持するためにとても重要な役割をしていますので、急激なダイエットと運動で体幹のインナーマッスルを含めた筋肉全般も急激に減少させてしまうと、知人のようにトレーニングの継続で姿勢も崩れ、バランスが悪化してますます負荷がかかり、かつ疲労をためやすい部分に影響が出始め、腰痛や膝通等を引き起こす事にもつながるのです。

体幹の筋肉量は年齢とともに衰えますし、身体のバランスも年齢と共に崩れていきがちです。急激な減量による筋肉(特に体幹のインナーマッスル)の減少は、そのアンバランスをより顕著にしてしまう危険性を秘めているということなのだと思います。

ダイエットを試みようとされる方は、こうしたことを十分知ったうえで、ゆっくりじっくりと楽しみながら挑戦されてはいかがかしら・・・、と思います。

いつもよりほんの少しだけ、余計に身体を動かしてみる。お茶碗をほんの少し小さ目のものに変えてみる。甘くて油のたっぷり入ったお菓子を、甘くても油の少ないものに変えてみる。食べるのも忘れてしまうほどの楽しいことを見つけてみる。自分の命の源になってくれている、他の生き物たちの命にほんの少し思いを馳せてみる。そして、「私のためにあなたの命を与えてくれてありがとう」と、食べる前にそっとささやき、いつもより少しゆっくり味わって食べてみる・・・。

こんなほんの少しの気持ちの切り替えを前向きに楽しんで、自分をちょっこっと褒めながら励ましてやる。焦らず、慌てず、じっくり、ゆっくり。「気が付いたらいつの間にか体重が減ってきたわー、」位がちょうど良いのではないでしょうか。


たとえ減量とは無縁でも、過去に怪我等をされ身体をかばった生活を続けていた場合には、身体のどこかにひずみが発生してくることが多いようです。身体のアンバランスは故障や怪我等がきっかけとなる場合が多いということなのでしょう。けれど、そういったことの全く無い方でも、長年の生活習慣の蓄積によって年齢とともにアンバランスが増幅されていくことは十分あり得ます。それにより腰痛や膝通をかかえる方も多いのではないかと思います。

減量等をしなくても、腰痛や膝通は体幹の筋力の減少、あるいは身体のアンバランスのどちらか一方だけが原因でも発生します。

必要以上に神経質になる必要はありませんが、日々の暮らしの中で、常に自分の身体や心と向き合い対話して、身体や心が発するメッセージに耳を傾け、早め早めにメンテナンスをしてあげる事はとても大切なのことのように感じます。

関連:

0 件のコメント:

コメントを投稿